障子ヶ岳
出谷川
排水中
対岸のエズラ峰
明光山付近 比較的快適な道
1500b付近の草原より明光山 中央
沢源流の狐穴小屋付近よりエズラ峰
狐穴小屋
高松峰付近よりエズラ峰
高松沢右岸尾根
高松峰付近より以東岳
最奥の障子ヶ岳へと続く尾根道 |
【日程】 9月16日 天候:晴れ
【山域】 以東岳 (1771b)
【ルート】 バカ平登山口→出谷川→以東岳→狐穴小屋 戻り
【行動時間】 17時間10分 累積標高差約2700b※
移動距離約33`※
※印、GPSデータが無いので電子地図データより
北アルプスでの夜間行動を含めた山行を予定していたのだが、天候の状況にやや不安があったのと、何より雷注意報が気にかかった。視点を変え、東日本の天気情報を見みると山形方面の天候が安定しているようだ。そんな訳で、以前から気になっていた出谷川からウツボ峰間の尾根道を辿ってみる事にした。
南俣沢出合(バカ平)の登山口より歩き出す、3時20分。最初の目標は稜線の天狗角力取山。見上げる夜空に天の川が大きく見える。少し前に雨が降ったようで草や笹は濡れていて湿っぽい道。闇の中、樹林帯の歩きは視界が無いが、何度か来ているので大まかな現在地は予想がつく。GPSの画面を見てもライトの光が反射して判断には時間がかかる。
尾根に出ると部分的に視界が開ける所もあり、遠く外灯の灯りが見えると少しだけ開放的な気分になれる。尾根を離れて沢筋の水場へ、濡れた石や岩が滑りやすいのでゆっくりと進行。水場の沢は水量が乏しく、ここ朝日連峰でも雨は少ない模様。今回、靴をモントレイルの新品に変えたので履いて来てみた。以前の旧型と同じモデルでも防水性は改良されたようで、表面は濡れていても靴の中はドライ。ただ靴底が若干滑りやすい感触はある。
竜ヶ岳を巻くようにして尾根に出ると空も明るくなってきた。小さなアップダウンを越え、粟畑の分岐までの行程が長く感じる道筋。石畳の道を緩く登って行くと分岐に出合う。左に折れて天狗角力取山へ。鞍部から僅かに登ると天狗角力取山、5時50分。小屋泊まりの登山者が一人、これから狐穴へ向かうとの事。小屋番情報では出谷川経由ウツボ峰の道は廃道で道は無いとか。確かにそんな気はするの心
出谷川へと下る道の状態は良好で快適に下降。狐穴へと至る稜線や岩肌が荒々しいエズラ峰が確認できる。障子ヶ岳が次第に高くなって行く。傾斜増してくると沢床も近い雰囲気。足元に落ちていた手頃な枝を拾い、杖にして渡渉準備。狭い段丘のビバーク適地にはタープとツェルトがセットで一張り。まあ、予想通りと言いますか、岩屋沢対岸にもタープが風に揺れている。
6時50分、出谷川渡渉ポイント。川岸に降りると水量は少ないが、飛び石で渡るには微妙な感じ。大分前に来た時とは水量がまったく違う。良さそうなポイントを探し靴のままで渡り出すが、対岸まであと一歩と言うところでヌメル石に足を滑らせコケた… 一瞬心地よい冷たさに暫く水に浸かっていようかと思う。すぐに岸に上がったが問題は濡れた靴。
今回は防水性の良い靴が裏目に出た。脱いで排水作業と靴下絞りに精を出す。人の気配に振り返ると釣り師が一人。沢を遡行するのでは無く尾根歩きも半々との事。水温が高く釣果は今一つとか。今後の歩きに影響するので排水に時間をかけたせいか、気が付くと30分程が経過していた。尾根の取り付き方向へと歩き出すと、対岸に渡渉を終えた風情な登山者が歩き去って行った。足元も濡れて無く身なりも小ざっぱりとしている
ウツボ峰への道は案外とチョロイかなと安心感が、ちらり。少し上流へ移動すると砂地に棒が二本立っていて奥にはビバーク適地の砂場があった。GPSでは道は上流に移動してから尾根に取り付いているが、地図の表記もあまり信用はできない。正面の藪気味斜面に取り付き進路を尾根方向に振ってみる事に。滝の高巻よりは楽と思っていたら、次第に傾斜は増す傾向。
ようやく微かな踏み跡に出合う。急な斜面を一直線に登り上げる道だが、藪漕ぎよりは楽です。GPSで現在地と時刻を確認。暫く道なりに行くと背の高いブナの木の上からガサガサと音がした。鳥か猿かなと思い、持っていた杖で幹を一発叩いてみたが、相変わらずのガサガサ、バリバリ。三本並んでいる立ち木を通過すると間もなく猿の大きなブゥブゥ声。はてなと思いつつ先を急ぐと背後に異常な気配がして振り返る。ありゃ、クマが木から勢いよく降りてきた。思わず背を向けてしまい、体勢的にこれはまずいと思いまた振り返るとクマは急斜面の藪に下り消えて行ってしまった。
息つく間もなく、続いてまたクマが降りてきてまたビックリ。今度は子クマの様だがクマはクマ。バカ野郎、おどかすんじゃねぇ。と威嚇する間もなく藪の中へ。距離は3b位か。 最初のもあまり大きくは無かったような気もするので、どっちも子クマだったかも知れない。それだけ普段から人気の無いクマ天下な尾根道とも言えるかも。
先を急ごう。時おり踏み跡が消える事もあるが、基本尾根を辿れば問題は無い。そう言えば最近登山者が下った形跡は無いのだが、先程の登山者の件がミステリーだ。見晴らしの良い崩壊地からは対岸のエズラ峰の姿が見られる。ギザギザのリッジが印象的な主稜や深い谷へと落ちる滝の登攀はクライミングの世界にも感じるが、聞くところによれば、すべての尾根ルートは地元の岳人によりトレース済とか。興味深いので後で資料を調べてみたい
エズラの写真を撮りGPSを見ようとしたら無い。ザックのサイドポケットに入れていたのだが落としたようだ。収まりの良いポケットで安心していたのだが。空身で下ってみる。心当たりは藪が被る辺りかと思うが、見つからず、15分程下り河原が大きく見える辺りで諦める。クマ滑りの木の辺りも良く確認。自分の不注意だから仕方ないか。諦めて再度歩き出す。
出谷川対岸のウツノシマ峰と高さが等しくなれば明光山ピークも近い雰囲気だが、次第に道は不鮮明になり道を外れて藪にはまる様になる。傾斜が無くなり尾根も広くなるが、どこがピークかは不明で藪の中。尾根を少し外れた所に道があり、ブッシュに隠れてはいるが歩きやすい。緩く下って行く。古い地図には明光山から下が破線表記なので明光山から上は歩きも楽になるかなと思っていた。予想が外れた
尾根の泥沼に片足を突っ込んで靴の中まで泥だらけで、こんな所で予想外な事態。灌木の背が低くなり小広い草原に出て一息。見上げる稜線はまだ遠く、対岸のエズラ峰も高い。周囲の山と地図で高度を推察すると1250b付近かと思える。まだまだです。ここから笹の勢力が増して来て涸れ沢に入ったら案の定で、道をロスト。戻っても判りそうには無いので強引に笹漕ぎの義。背丈を越すので漕ぎのレベルが高い所に来て低い灌木が混じり更にレベルを高くする。全身を使い平泳ぎやクロールで藪を泳ぐが消耗戦、限界の二文字が浮かんで弱気な感じ。
灌木に上がり見渡すと笹の色が微妙に違う所を発見。涸れ沢の可能性もあるが行ってみる。道かどうか不明だが取りあえずスペースを辿ると先は続いていた。広い草原に出て、笹道となった踏み跡を辿り上部で腰を下ろす。真ん中辺りで大きなキジ跡があったが、やったのは沢屋さんかなと想像。最後の水を飲み干すと水筒は空。喉はまだ乾きがある、藪漕ぎも効いているし気温も高い。まだまだ遠い狐穴までは水は無し。重い腰を上げて稜線を目指す。
笹は低くなり大分歩きやすい。藪漕いでいるときは全身に力が入るので呼吸が安定せずに酸素不足になる気がする。意識しないと深い呼吸はできないが、しばらくすると忘れてしまうのは腹筋も限界近いのだろう。そんな事を考えつつ歩いていると案外と早く稜線へ。12時、ウツボ峰。
順調ならもう以東岳を下っている時刻だが、なんて予想外が多い日だ。展望は素晴らしいがゆっくりと楽しんでも居られない。見下ろすと、明光山へと緩やかに下る尾根はたおやかで女性的に見える。最近は山に行く回数も減っているせいか体力の低下と体重の増加が気になっている、原発事故のせいばかりでは無いのだが、気楽に里山歩きにも行けないと言うか。
以東岳のピークは見えるが、随分と遠くに感じる。東に見えるエズラ峰へと緩く下る尾根は見上げた時とは対照的に伸びやかだ。格段に歩きやすくなった道を辿り、幾つかのピークを越して山頂へと。誰も居ない以東岳山頂、12時45分。
休んでも居られないと言った感じだが、岩の上で暫しダウン。下に見える以東小屋の先に水場はあるが、使えるかどうかは疑問。狐穴は水量豊富なので狐穴へと直行する事に。谷から冷たい風が吹き上げて来ると、その時だけは生き返ったような気分になれる。真夏のような陽射しが厳しい。道にはロープや目印があり、荒天でも迷う事は無いだろう。時おり振り返りながら小さく見える狐穴小屋へと進行。
大きくうねる様な稜線を越して少し登ると沢源頭の様相の草原となり、小屋は間もなく。狐穴小屋、14時15分。水場には引かれた水が豊富に出ていたが、やはり例年よりは少ない。客が数人休んでいたが、なりふり構わず頂きついでに水浴び。生き返った、有り難い。山ガールが近くにやって来ても言葉をかけるパワーは既に無し。
充分に休み、心地よいずぶ濡れ状態で天狗角力取山へと歩き出す。エズラ峰や以東岳の眺めも良好で、障子の隣に月山と葉山も見える。小さく登ったり下ったりしながら二ッ石山を越せば尾根道の行程も約半分か。茶色になったブナの葉が早くも落ち始めていた。高温と少雨の影響か、木々が弱っている様にも見える。最後に天狗角力取山へと登れば後は大きい登りは無いので幾分気も楽になる。
17時50分、天狗角力取山山頂。夕焼けは無くあっけない感じの日没。その先の分岐付近で一休みしてからヘッデンを出す。ライトがあっても水場付近は足元注意なので慎重に。予定より遅くなっているので、途中の見晴らしの良い尾根から自宅に電話すると問題無く通話できた。少し感激。20時30分、出発地点に戻り。
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