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 2010年 山歩きの記録                        yamayama.s.
 7月19〜20日 高瀬ダムより槍ガ岳 (3180b)           
 19日

高瀬ダム

野口五郎岳

鷲羽岳と三俣山荘

双六小屋手前で

槍ガ岳山頂
 20日

硫黄ノ頭付近からの槍

丸山の斜面

黒部川源流部と黒部五郎岳

鷲羽池と槍 硫黄尾根

薬師岳と岩苔乗越 高天原温泉












【日程】 7月19〜20日 天候:晴れ
【山域】 北アルプス 槍ガ岳
【ルート】 高瀬ダム登山口より槍ガ岳を往複
【行動時間】 19日 14時間5分
         20日 17時間30分
【データ】 累積標高差3100b (19日) ガイドブック参照値
      移動距離約58` (2日間)


 通称、裏銀と言われる七倉から槍ガ岳への登山コースを利用して、槍ガ岳往複二日間のプランを立ててみた。ガイドブックのコースタイムは片道24時間とあり、果たして一日で槍まで届くかどうか。

 出発前日に腰を痛めたり、足の状態も良くは無いので、体調を考えつつ歩いてみようかと。周辺には赤牛岳や高天原等、予定変更で遊べるポイントも多い事だし。


 前日、軽く仮眠するつもりが7時間も寝過ごしてしまった。高速を飛ばして七倉へと向かうが、アクセルを踏みすぎたか燃料の減りも早く、途中で給油するのも想定外の事。七倉の駐車場に着いたのは9時を過ぎていた。

 タクシー利用で高瀬ダムまで移動してから歩き出す、9時50分。料金は2千円也。車に自転車は積んであるが、残念ながらこの時間帯では使えない。見つかると結構うるさい様だし。見上げるとブナ立尾根の先に稜線が見える。対岸の唐沢岳と幕岩が大きい。

 トンネルを通過して河原を歩き、15分程で登山口へ。濁沢沿いの急斜面の道も足場が組まれ、ジグも切ってあるので登りやすい。登山者がボチボチと下って来る。やはり北アルプスで、若い女性の姿も結構見られる。ブナ立尾根の名の通りで、稜線まで樹林の中の歩きが長い。

 12時20分、烏帽子小屋。小さなお花畑を見ながら小屋の前で一休み。少し薄雲が広がってきたが、陽射しは強く汗が止まらない。池のあるキャンプ地を通過して三ツ岳へと向かう。付近にはお花畑が点在。次第に岩と砂礫の道となり、周囲にはコマクサが見られる。

 道は三ツ岳ピークの下を巻いて西峰へと。残雪の影響か辿る道のりも若干の変更がある。雲の影響で遠望は利かないが、赤牛岳をはじめ周囲の山並みの眺めは良好。斜面に残る残雪の白さが印象的。野口五郎が目前に大きい。

 14時30分、野口五郎小屋。小屋前で一息。冷えたコーラを飲むと生き返るようだ。冷えたビールに食事付きの小屋など、東北の山にでは考えられない。14時50分に野口五郎のピークを通過。右下に五郎池を見ながら鞍部へと下る。赤茶けた崩壊地の先に水晶小屋が見える。

 東沢乗越にはテントが一張り。時期と場所を考えて幕営したいものだ。険しい感じの尾根が続くが、道はしっかり付いているので通過には問題ない。一登りすると小屋前に出た。16時20分、水晶小屋。

 ベンチでは登山者グループがビールを片手に宴の最中。軽く雑談していたら、その内に年齢や職業、登山歴からザックの中身まで質問が次々と。普通の登山者には見えないのだろうか。一休みして歩き出す。岩苔乗越から黒部源流部を下り三俣山荘へと向かってみる。

 沢筋は意外と雪渓が残っていたが、概ね夏道通しに下れる。水が流れる道筋には花が多い、観賞していると時間的にきつくなるので程々に。三俣山荘への沢の分岐付近は思ったより開けていて気持ちの良いところ。見上げる鷲羽の眺めも良い。広い鞍部方向へと小沢沿いに登り、山荘を目指す。

 17時55分、三俣山荘。そろそろ日没も近い雰囲気。石が転がる荒れ気味の道を辿り双六小屋へと歩く。三俣蓮華への分岐からは山腹を巻くコースへ。部分的に道は残雪に隠れているが、雪は緩んでいて通過に問題は無い。時おり雲が流れて視界は悪い。長く感じる巻き道も、双六岳からの道が合流すると小屋は近い。

 19時30分、双六小屋。ここで水を補給して冷えたジュースを一本。夜間行動の準備をして樅沢岳へと歩き出す。小屋前のベンチで宴会中の団体さんが「どこへ行くんだ」と怒鳴っている。説明するのも面倒なので無視。槍に行くに決まってる。

 しばらく歩くと人影のような標柱が立っていた。不思議に思い近付いてみると人だった。通話はできないがメールの送信は可能との事。霧が深くなり、ライトの光りが反射して見えにくい。もう一つのライトを手に巻きつけて下から照らすと陰影がついて良く見える。

 突然、足元の岩の隙間からオコジョが顔を出した。手が届きそうな間合いで、上半身を直立させてこちらをじっと見ている。中々愛嬌がある。しばらくすると岩の隙間に消えて行った。振り返ると三俣山荘の明かりが思ったよりも近くに見える。樅沢岳を通過すると風が強くなり霧雨状になってきた。カッパを着用。

 時おりあらわれる、雪堤上の歩きが長く感じる。薄い足跡とヤマカンが頼り。次第に岩が目立つようになると西鎌尾根らしい雰囲気となる。千丈沢乗越を通過すると後は最後の登り。岩と石の道は残雪を踏む事も無く割と歩きやすい。やがて雲が切れて星空が見えてきた。ライトを消すと小槍と槍のシルエットが大きい。

 槍岳山荘の前には人影がありライトの光りが交錯していた。槍の穂先に取り付き山頂へ。暗いので慎重に登る。ここで落ちたら格好悪い。最後にハシゴを登ると山頂に出る。23時55分、槍ガ岳山頂。

 山荘のベンチ下辺りでビバークしようかと思ったが、時間も時間だしあちらは遠慮してここで休む事にする。風は弱く星空が見える。眼下には雲海が広がっている。岩の隙間に銀マットを敷きレスキューシートにくるまる。風は弱いが、結構シートがバタつき体が冷える。気温は5度程。落ち着かないので下山にかかる。

 1時30分、山頂発。30分程の仮眠と思ったら結構休んでいたようだ。登り以上に慎重に下り肩へと。後は往路を辿り歩くのみ。眠気で足元がふらつく感じもあり、千丈沢乗越の先の手頃な岩の上で寝転んで30分程仮眠。

 次第に空が明るくなり、振り返る槍ガ岳の眺めが宜しい。踏み跡が分かれる辺りが硫黄ノ頭だろうか。樅沢岳の登りにかかる辺りで早くも単独者が下ってきた。朝日に映える笠ガ岳や穂高の眺めが良い。

 5時50分、双六小屋。カッパを脱ぎ、靴下等を交換しながら30分程休憩。昨日とは違う稜線コースを辿り三俣山荘へと向かう。残雪の影響で中道方向へと誘導され、三俣蓮華岳へ。先行する登山者は早くも無いが追いつけない。思っている以上に足取りは重い感じ。丸山が三俣蓮華かと思ったら蓮華はその先のピークだった。

 三俣蓮華岳、7時45分。分岐へと下り往路に戻る。赤い屋根が遠くからも目立つ三俣山荘へと緩く下って行く。三俣山荘、8時25分。持ってきたパンはまだ有るが、食べ飽きたせいもあり食が進まない。山荘でカップ麺を食べる。こってりとした濃い味が体に染みる。お姉さんが頼んでいなのにコーヒーを出してくれた。もちろん有料、でもうまかった。

 疲れのせいか休憩が多いなと思いつつ、鷲羽岳へと歩き出す。登り出し付近から沢方向への踏み跡に入ってしまった。少しだけ藪を漕いで登山道に復帰。伊藤新道への道だろうか。随分と前に来たときは雨で視界が無かったが今回は良好。鷲羽池と槍の眺めは絵に描いたよう。

 9時45分、鷲羽岳山頂。陽射しが強く汗が止まらない。登山者との雑談で、槍から来たと言うとやたらと受ける。乗りの良い方が多いこと。一旦下りワリモ岳へ。目の前の山頂へは寄らずに赤池へと下り出す。

 傾いた岩に乗せた左足が唐突に滑り前方へと倒れかけた。顔面をかばう為に左手を突いて避けたが、意外と肘の痛みとかすり傷だけで済んだ。まあ、ダメージが少なかったのは運が良いと言える。ゆっくりペースで歩き水晶小屋着、11時20分

 またもカップラーメンで休憩タイム。目前の野口五郎岳が大きい。先の行程が見えて来たので、ゆっくりしてから鞍部へと下る。日没くらいまでには高瀬ダムまで下れだろう。13時35分、野口五郎小屋でまた一息。気象条件の厳しさを感じる小屋の作り。後は概ね下りの道筋。三ツ岳まで来ると烏帽子岳と小屋が見える。

 15時45分、烏帽子小屋。ブナ立尾根を下り出す。GPSの電池が切れたのでログも取れない。要所にcvレートが設置してあるので現在位置は把握しやすい。登山者と合う事も無い下り道。17時40分、登山口。

 近くの沢水を浴びてすっきり。高瀬ダムまで来ると客待ちのタクシーはすでに居なかった。七倉まで歩く事になる。少し小走りになったりしながら最後の歩き。19時、駐車場に戻り。