三岩岳の周辺は豊富な積雪量で見事な斜面を連ね山スキーの対象として絶好の山域といえる。今回この山域は初滑降となるが今期のテーマとして集中滑降を試みた。全般に困難なルートはなかったがルートの選択によっては充分に手応えのあるスキー滑降を味わえる。
3月18日 三岩岳よりミチギノ沢、窓明山より保太橋沢を滑降
ルート図
6時、国道の蟹沢橋より三岩岳東尾根末端に取付く。1280mのコルより滑降ルートになる窓明山の大斜面を偵察する。予定していた尾根筋より沢筋のルートが滑りやすい様だ。三ツ岩が見えてくると黒檜沢源頭の誘惑的な大斜面も次第に露になる。雪質は申し分のないザラメで今回のチャンスをのがすと次回はない様にも思えるが、三岩沢と共に次回の課題として山頂へ向かう。
10時20分、三岩岳山頂。小休止の後反対側のミチギノ沢1350mを目標に滑り出す。雪質はハードクラストしていてコンクリートの上を滑っているようで不快だ。1500m付近で傾斜も緩くなってきたので早めに滑降を中止して窓明山へと登高を開始する。
12時30分、窓明山山頂。気温と雪質をチェックしてから保太橋沢源頭の大斜面に飛び込む。雪質は重いが傾斜があり快調に谷底へと向かう。目標としていた二股の近くでノド状の箇所があり左にトラバースして急斜面を沢床へと降りる。見上げる稜線と雪庇はスケールが大きく迫力がある。さらに次の目標の1050m二俣を目指し幅の広い沢床をロングターンで滑るが、ふり返るとシュプールはショートターンにしか見えない。1050m二俣より1300m尾根上へと伸びる支沢を登高してツアーコースに合流する。後は蟹沢へルートを取り蟹沢橋に出て滑降を終了する。
14時50分出発地点に戻る。
3月25日 三岩岳黒檜沢滑降 ルート図
前回の課題となった黒檜沢と三岩沢の滑降を計画したが前日の降雪により予定タイムをオーバーして三岩沢滑降はのがしてしまった。
8時15分、天候の回復を待って出発。三岩岳の南東尾根に取付く。高度を上げるにつれてラッセルも次第に深くなり予定コースタイムも遅れ気味だ。三ツ岩が見えてきたので北側にトラバースして雪質をチェックする。比較的安定しているがかなりの積雪になっている。
13時45分三ツ岩の上部2020m地点を本日のピークとして滑降の準備をする。ビーコンを装着してピッケルを背中とザックの間に突っ込む。黒檜沢源頭の中間尾根を目標にして滑り出すがすぐに転倒してしまう、軽い粉雪で体が山側に回転してしまったのだ。以後はオープンスタンスに切替えて慎重に大斜面を下降する。尾根上部より滑降予定の左俣を偵察すると小規模なデブリを確認するが通過に問題ないようなので左俣をルートに決定して滑り出す。快適な滑降が続くが雪崩れたら逃げ場のない雪面にストレスをあたえない様に細心の注意でターンを繰り返す。やがて目標である尾根末端の二股を確認すると雪質も次第に重くなってくる。デブリをさけて1400m二俣に滑り込み核深部の滑降を終了する。さらに下降を続けるが雪の腐った緩斜面は滑りの楽しみはないので早めにトラバースして三岩岳南東尾根へと登り返す。
16時 1400mの尾根上に出る。下大戸沢へ滑り出すが思ったより快適な斜面で最後まで滑りを楽しめた。
16時30分、出発地点に戻る。
3月28日 大戸沢岳中ノ沢滑降 ルート図
大戸沢岳東尾根を登りムジナクボ沢と下大戸沢支流中ノ沢の滑降を目指した。
8時40分、大戸沢岳東尾根に取付く。順調に尾根上を登高するが1500m付近より前日の積雪でラッセルが深くなる。
12時10分、大戸沢岳山頂。周囲の斜面を偵察してからムジナクボ沢へと滑り出す。固くウインドクラストした斜面は悪く30m程下降して滑降中止を即決、ぐるりとトラバースして反対側の中ノ沢源頭に出る。中ノ沢と三岩沢の合流点を確認し面白そうなラインを選んで滑降を開始。重い雪質と登高重視の道具のせいかターンが思うように決まらぬまま高度を下げ谷底へと降りる。振り返ると稜線より延々と自分のシュプールが残っていた。斜度の落ちた沢筋をプルークボーゲンで滑り下大戸沢の最後のスノーブリッジを渡ると出発地点の国道は目の前だった。
13時45分、出発地点に戻る。
4月15〜16日 小豆温泉より丸山岳往復 ルート図
三岩岳から見る丸山岳は山並の奥に小さいが稜線にルートを取り条件が良ければ2日間で往復できそうに思える。計画では坪入山付近にベースを置き軽装での登頂を考えたが現地での判断で初日に行けるところまで行って翌日に余裕を持って行動できるようにした。
15日7時30分 雪のない登山道を三岩岳へと登り出す。1000m付近より雪がつながりシール登高を開始する。
11時30分 三岩岳近くの1850m付近より1200mミチギノ沢二俣を目指し滑り出す。気温が高く雪質は湿性のザラメで重いが快適な中斜面を一気に目標の二俣へと滑り込む。坪入山の横にある1760mピークへと伸びる沢筋ルートは一箇所水流が出ている以外は通過に支障はない。スプーンカットの真中にいると激しい水流の音を感じる。1600m付近よりツボ足での登高となる。
14時40分 1760mピーク。計画ではここで幕営して丸山岳往復と思ったが、高幽山への稜線が悪そうなのとまだまだ遠い丸山岳に計画の変更を考える。しばらく周辺を偵察すると東実沢が雪でつながっていたので、東実沢と西実沢経由ルートへと計画を変更する。
15時30分 一旦北へ伸びる尾根を利用して下降を開始。面白そうな斜面を探し適当な所で東実沢1100mを目標に小尾根を滑り降りる。スキー板の心地よいしなりを感じながら、ミドルターンの連続でさして障害もなく目標の1100m地点に降り立つ。 左岸の支沢をルートに1381m小ピークを目指し登高を始める。急斜面を左に寄ってしまい1420mの尾根上に出る。雪庇の弱点より西実沢へと合流する沢筋を快適滑降1120m付近の台地で幕営とする。17時20分。
16日4時30分 天気は下り坂なので早めに行動を開始。西実沢より1698mピークへと続く広い尾根に取付く。シール登高の限界に近い登りに手間取りながら稜線へ近づくと傾斜も緩くなってくる。丸山岳へと続く稜線はアップダウンが続くが稜線通しに通過して丸山岳を目指す。
7時30分 念願の丸山岳に登頂。丸い山頂からの展望は申し分ない。遠くに見える三岩岳を目指し早々に下山開始。シールのまま下り梵天岳へと向かう。
ルートとなる稜線は広く条件も良かったので目標の1760mピークまでシールのままで通過した。下りでは連続ターンと直滑降でスキーの機動力を活かし丸山岳からのコースタイムを予定より短縮できた。
12時 1760mピーク。小雨が降り出したので急ぎ滑降準備をする。ミチギノ沢1200mを目標に源頭部の大斜面へ雪庇の切れ目より滑り出す。
12時15分 ミチギノ沢1200m二俣より三岩岳へと往路を登り返す。
14時50分 三岩岳1800m付近。ふり返ると梵天岳の奥に見える丸山岳が小さかった。
16時20分 出発地点に戻る。